大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)3620号 判決 1955年1月11日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人幸節静彦の上告趣意について。

物品税法(昭和二四年法律第二八六号による改正前のもの)一八条一項は、国家が租税債権の確保をはかるために、納税義務者の義務違反、就中逋脱行為等はこれを犯罪として、これに対し刑法に刑名のある刑罰を科することとしたものであり、同条四項は、当然納むべき、すなわち、逋脱した税金を直ちに徴収することができる旨の行政的措置を規定したものと解すべきであって、同条項は所論のように刑罰とかわるところのない性質のものではない。そして、物品税を逋脱した事実が発覚したためになされた税務署長の通告処分(物品税五倍の罰金に相当する金額及び書類送達費の納付)を履行しなかった以上、その後に右物品税を納付しても、告発にかかる物品税逋脱犯の刑事責任を免れることができないことは、当裁判所の判例とするところである。(昭和二八年(あ)四一〇六号同二九年一月二一日第一小法廷決定、集八巻一号九〇頁以下参照)。されば原判決の判断は正当であるから、所論憲法三九条違反の主張は前提を欠き採用できない。

よって刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例